歯周病の治療
歯周病の治療には、大きく分けて基本歯周治療と歯周外科治療の2つがあります。歯周基本治療は歯周病の原因であるプラーク・歯石を除去し、炎症症状改善するために行われます。歯周基本治療だけでは症状が十分に改善せず、深い歯周ポケットが残っていたり、複雑な歯槽骨の欠損が認められる場合には、歯周外科治療が行われます。
フラップ手術(歯肉剥離掻把手術)
フラップ手術では、歯周基本治療では除去できなかった歯周ポケットの深いところに存在するプラーク・歯石などをきれいに除去するために行われる歯周外科治療のひとつです。歯肉に局所麻酔を行った後、歯肉を切開・剥離してプラーク・歯石などを取り除きます。フラップ手術時に歯周組織再生療法を併用することで、失われた歯周組織を再生させる工夫をすることもあります。
リグロスを用いる歯周組織再生療法
リグロスの成分は、細胞を増やす成長因子で、この成長因子の作用により歯周病で破壊された歯周組織の再生を促進する治療法です。フラップ手術で、プラーク・歯石などを取り除いた後に歯槽骨の欠損部にリグロスを塗布し、歯を支えている歯周組織の再生を促します。
歯周病は進行するまで自覚症状の少ない病気です。そのため、気付いたときには病気が進行して、歯を支える歯槽骨などの歯周組織が破壊され、歯を抜かなければならない場合もあります。歯周組織再生療法は、その名の通り、歯を支えている歯周組織を再生する治療法です。この治療を受けることで、自身の歯を長く温存できる可能性があります。
歯周内科治療
歯周内科治療は、歯周病の原因である歯周病菌を、薬を内服して除菌する治療法です。歯周病の原因菌が特定されたのは実は最近のことで、21世紀に入ってから行なわれるようになった、新しい治療法です。
顕微鏡を使って、お口の中にどんな種類の歯周病菌が、どれくらいいるかを確認します。当院ではあなたのお口にいる歯周病菌に合わせ、国際歯周内科学研究会が推奨するアジスロマイシン(細菌を除去する内服薬)を使って歯周病菌を退治していきます。
歯周病の進行について
歯肉炎
歯周ポケットにプラークが溜まり、歯茎が腫れたり、歯磨きの時に出血したりします。
歯周病の一歩手前です。
軽度の歯周炎
歯茎が出血しやすいだけでなく、歯槽骨(顎の骨)が溶け始めています。
中度の歯周炎
歯槽骨(顎の骨)がかなり溶けてなくなっている状態。
歯のぐらつきや、口臭の悪化といった症状が出始めます。
重度の歯周炎
歯槽骨がなくなってしまい、歯が抜ける寸前の状態。
歯周ポケットがかなり深くなり、歯がぐらついてうまく食事ができなくなります。
歯周病が全身に与える影響
歯周病そのものが、全身の健康に関わっていることが分かってきています。歯周病が起こるということは、口の中で常に炎症が続いているということです。炎症によって出てくる毒性物質が、歯茎の血管から全身に送られ、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。
歯周病から誘発される病気
狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、妊娠性歯肉炎、早産、低体重児出産、肥満、誤嚥性肺炎、骨粗鬆症、関節炎、腎炎
また、歯周病菌のひとつ、「P.g菌(Porphyromonas gingivalis)」がもつ『ジンジパイン』というタンパク質分解酵素がアルツハイマー型認知症と関係しているのではないか…と示唆されています。
歯槽膿漏と歯周病ってちがうの?
歯槽膿漏(しそうのうろう)は、歯周病の症状の一つです。歯槽膿漏=(イコール)歯周病と捉えられることも多いようですが、厳密には歯周病は、細菌によって引き起こされる歯や歯ぐきの病気である「歯肉炎」と「歯周炎」の総称です。病名としては歯周病が正解です。
日本人の場合、歯肉炎は10~20代前半ですでに60%のかたがかかっているといわれ、50才代でおおよそ80%の人がかかっているといわれるほど、多くの方が悩んでいる歯の病気です。だれもがかかっている病気だからといって軽視していると最後には取り返しのつかないことになってしまう怖い病気です。
歯周病は予防できます。また、早期発見、早期治療がもっとも大切なキーポイントとなりますから、歯が痛くなくても、半年に一回は診察したほうがいいと言われています。(健康な歯と歯ぐきであれば、定期検診は痛くもなんともない、むしろリラックスできる癒しの場となるはずです。)
歯周病の原因
歯周病の原因は、お口の中にいる細菌です。さらにその中で、歯周病菌と呼ばれる菌が歯周病の原因となっています。むし歯菌も歯周病菌も、歯垢(プラーク)と呼ばれるネバネバした細菌のかたまりの中にすんでいます。ネバネバしているので、いろんな細菌がくっつきやすくなっています。(とりもちみたいですね。)
さらにネバネバした歯垢が石灰化して硬くなると、歯石と呼ばれるようになります。この歯石の表面はザラザラしているので、そこにも歯垢がつきやすくなります。歯垢の段階なら歯ブラシでこすれば取れるのですが、歯石になってしまうと歯ブラシでは取れませんので、歯医者さんで除去するようになります。
歯周病にならないためには、口の中の細菌を減らせばいいわけで、むし歯と同じく、やはり歯ブラシできちんと歯を磨くのが有効なのですが、歯周病になるのにはこれ以外にもいくつか原因があると言われています。
歯周病の原因1…喫煙
タバコを吸うと、血管が収縮して血流が悪くなるので、歯周病が進みやすくなると言われています。
歯周病の原因2…糖尿病
体の抵抗力が低下するため、歯周病も悪化することがあると言われています。
歯周病の原因3…女性ホルモンの変化
思春期や妊娠したとき、あるいは更年期など、女性ホルモンが急激に変化するときに、ホルモンの影響で歯周病になりやすくなると言われています。
歯周病の原因4…ストレス
ストレスによる歯ぎしりや、ストレスによる体の抵抗力の低下などにより、歯周病になりやすくなると言われています。
歯周病の原因5…食生活の乱れ
柔らかいものや甘いものばかり食べていたり、ダラダラと飲食し続けていると、歯垢ができやすくなります。また、栄養が偏ると、体の抵抗力が低下して歯周病になりやすくなります。
歯周病の原因6…歯並びの悪さ
歯みがきをしても、毛先が行き届かないところにだけ歯垢がついたままになってしまうことがあります。
歯周病の原因7…口呼吸
口呼吸の弊害はいろいろなところで挙げられているようですが、口の中が乾燥するため、歯周病にもなりやすくなると言われています。
こうしてみると、自分で気をつけられそうな項目がたくさんありますね。歯だけでなく全身の健康を守るためにも、自分自身の食生活や嗜好、癖などを見直して、正しい歯みがき生活をしましょう!
歯周病の予防方法
歯周病にならないために、あるいは歯周病をこれ以上進行させないために、何をしたらいいのでしょうか?
先ほど書きましたように、歯周病の原因は歯垢の中にいる細菌です。細菌が減れば歯周病になる可能性も低くなります。細菌を減らすには、歯垢を取り除くことが大切です。歯垢がなくなれば、歯周病だけではなく、むし歯になる可能性もグッと低くなります。(一石二鳥ですね)
歯垢を取り除く方法、それは正しい歯みがきをすることです。
「え。毎日歯みがきしてますけど…。」とおっしゃる方も多いと思いますが、それでもむし歯や歯周病が減らないのはなぜだと思いますか?それは、きちんと(正しく)歯をみがけていないからに他なりません。
歯をちゃんとみがこうと思うと、意外と神経を使います。 慣れの問題だと思いますが、鏡を見てじっくりゆっくりみがきながら、正しい歯みがきを体感してください。磨きあがった後の口の中は、清潔感いっぱいで本当に気持ちいいです。当院でもブラッシング指導をしていますので、ぜひ受けてみてください。
また、生活習慣を改善することも大切です。先に書いた歯周病の原因となるものを一つずつ取り除いていってみてください。細菌が原因だと分かっているのですから、その細菌(のかたまりである歯垢)を取り除くこと、そして、自分の体そのものを健康に保って、細菌に負けない状態にすることが大切です。
歯周病をきっかけに、あなた自身の生活や健康をぜひ見直してみてくださいね。
歯周病の治療法
今なってしまっている歯周病は、正しい歯みがきや生活改善でその進行を止める、あるいは遅らせることができても、根本的には治癒しません。ひどい歯周病になってしまったら、歯医者さんで治療してもらう必要があります。当院では、歯周病の患者さまには以下のような治療を行ないます。
1)応急処置
応急処置が必要な場合には行ないます。歯肉が腫れている場合には、腫れている部分を切って膿を出すことがあります。
2)ブラッシング指導(プラーク・コントロール)
的確に歯垢を取り除くための、正しい歯みがきの仕方をお教えします。(ブラッシング指導と呼びます。)新しい歯ブラシをお渡ししますので、歯科衛生士と並んで一緒に歯みがきをします。
3)歯石除去(スケーリング)
歯垢が石灰化してかたまってしまった歯石は、プロが取り除くのが、一番安全で確実です。むし歯や歯周病の温床となってしまうので、歯石があったらすみやかに取り除きましょう。
4)スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
目に見えない部分(歯ぐきと歯の境目=歯周ポケットの奥)に歯石がある場合は、局所麻酔をして歯石を除去します。歯垢や歯石によって汚くなった病気のセメント質も除去して、ツルツル・ピカピカに仕上げます。
5)歯周外科手術
歯石を除去したりしても歯周病が治りきらない場合は、歯周外科手術をします。歯肉を切って歯槽骨からはがし、こびりついて取れなかった歯石を除去してツルツル・ピカピカにします。
6)メンテナンス
歯周病は、歯医者さんでの治療が終わってからが大事です。せっかく取り戻した健康を維持しましょう。毎日の正しい歯みがきとと規則正しい生活、定期検診が必要です。
こうして見ると、症状が軽いうちは時間もお金もかけずに治すことができますが、症状が重くなると時間もお金もだいぶかかってしまいます。時間もお金も大切ですが、他ならないあなた自身の大切な体のことですから、自分でできるお手入れは毎日自分でやって、数ヶ月に一度の定期検診でチェックしましょう!
ぺリソルブ治療とは
出血や細菌リスクを最小限に抑えた最新の歯周病治療です。
ペリオプロ(ペリソルブ療法)は、スウェーデンで生まれた、歯周病菌に侵されている歯茎の内側(上皮細胞)を殺菌して新しい細胞と入れ替えることで、歯周病を元から断つことができる治療法です。『ペリソルブ治療』は本来、手術が必要な重症な歯周病でも「外科手術が必要な部位を減らす」ことが出来る新しい治療方法です。イエテボリ大学歯学部歯学部長 Peter Lingstrom教授、スウェーデン歯周病学会会長 Stefan Renvert教授が推奨しています。
歯周病は、歯茎など歯を支える周りの組織の病気です。歯周病菌は、歯周ポケットから上皮細胞の中に入り込み、細胞内で無数に増殖し、やがて歯を支えている骨さえも溶かしてしまいます。
ぺリソルブ治療の特徴
歯周病の原因である歯垢(プラークまたはバイオフィルム)や歯石を専用の薬剤ペリオプロ(ペリソルブ療法)を塗布して除去する治療法です。
歯垢とは、歯の表面と歯の歯茎の境目(歯周ポケット)に付着する細菌の塊で、さらに硬く固まった歯垢が歯石となります。 歯石は専用機器(エアスケーラーや超音波スケーラー)で振動を与えて除去するので、歯周病がかなり進行している場合、強い振動や痛み・歯茎からの出血が伴う場合がありますが、ぺリソルブを用いて溶かすことでそれらを抑えることができます。歯石や歯垢をやわらかくできるため、固まった歯石や歯垢を除去するときよりも歯茎に負担が少なくてすみます。
ぺリソルブ治療のメリット
ペリソルブ治療には、いくつかのメリットがあります。
・通常の歯周病治療に比べて痛みを感じにくいです。
・健康な歯茎を傷つけません。
・歯周病菌の飛散を最小限に抑えます。
・外科手術が必要なケースでも、ぺリソルブ治療により外科手術を回避できる場合が多いです。
ぺリソルブ治療のデメリット
一方で、ペリソルブ治療にはデメリットもあります。
・保険が適用されないため治療費が高くなります。
・歯石や歯垢に薬剤が浸透し、溶けるまで待たなければいけないため治療時間も長くなりがちです。
この他にも注意点として
・ポケットの深さや歯石の付着状況、虫歯の併存など、状態により治療が向かない場合があります。
・クロロヘキシジンや強酸との混合が禁止されている薬剤ですので、この成分を含む市販のマウスウオッシュやうがい薬の使用は避けてください。
・薬品にアレルギーがある場合は治療ができない場合があります。
また、ペリソルブ治療は歯石や歯垢を溶かすことはできますが、除去は手作業になるためスケーリングやクリーニングと併用して、溶けた歯石や歯垢を取り除く必要があります。
最新のGTR法も行っています。 東京歯科大学歯周病科 山田了教授より頂いたサーテイフィケートです。 |